春の枢軸−Japan






春の陽気というものは、往々にして人を活動的にさせるものです。



私の家の天気は春には変わりやすいのに、今日は朝からきれいな青空。
それに惹かれたかどうかは知りませんが、ちょっと出かけたくなったのです。

行先も知れない散歩。常々計画を立てて行動する私には珍しいことです。
でも、出かけたくなったのです。あたたかな春の空気にはそれだけの力があります。




「春、ですねぇ。」




少し前まで雪に隠れていたあぜ道が、すっかり春の様相に変わっています。
こんなとき、私は自国の季節の多様さを誇りに思うのです。
これは、なにごとにもかえがたい。




ふぁりと、風が髪をなぜていく。
春の空気はどこか甘い。
いろいろな可能性を秘めているからでしょうか。



「おや?」




ふと、視界の端に珍しい花。




「これは、セントーレアですね。」



薄い紫の輪状の花。
朝露に濡れた葉は重そうに下を向いて。


脳裏に金色の髪の世話焼きの友人がよぎりました。


「そういえば、ドイツさんの国花はこれではなかったでしょうか?」



この花は越冬性があります。冬の寒さを自力で超す。
あの頑張り屋のドイツさんにはぴったりかもしれない、と思ったらなんだか楽しくなりました。



今度、イタリアさんと、ドイツさんと私で散歩にでるのもいいかもしれません。
私の家の美しい春を堪能するのもよいものです。
きっと、楽しくなるでしょう。

吹きゆく風ははるの香り。
目にかかる髪を手で払って。




セントーレアの株をそっと掘り起こしました。

これは、庭の隅にでも植えましょう。
今度、皆さんを呼ぶ時までには、少しは見栄えもよくなるでしょうから。







春の枢軸日本編。密かに日本初書き。拍手ありがとうございました!!