空をなくす


落ちていくような感覚がした。夢に落ちるその瞬間落ちるような感覚がした。ただただ深い穴に落ちていくようなそれは酷い感覚だった。

怖い。

不意にそう感じた。怖い、怖い、落ちてしまう。ふわふわしたような眠気に襲われ、心地よいはずの感覚の中、不意に恐怖を感じたのだ。怖い、怖い、この感覚を自分は知っている。昔、まだ自分がイギリスのところにいたころ、一人で眠るときに感じた感覚だ。落ちる感覚。深いところに落ちていく感覚。

落ちるのだろうか。今は世界の頂点に君臨し、世界をその手にしている自分もいつかは落ちるのだろうか。イギリスがゆっくりと落ちていったように。今共に生きている国もいつか離れていくのだろうか。イギリスが今一人でいるように。ふと思う。イギリスはたくさんの植民地を手にしてそれで何かを埋めようとしようとしてたんじゃないだろうかと。自分も何かたくさんを手にして何かを埋めようとしている。何をだろう。何をなんだろう。脳裏に浮かぶ影。嫌だ。嫌だ。信じたくない。自分はまだ落ちたくはない。それでも落ちてしまう。空から落ちてしまう。深い深いブリリアントグリーンの中に落ちてしまう。自分が今まで必死で
手にしてきたものが曖昧になって初めて気付いた。自分は彼に依存していた。彼を嫌いだと彼から離れたいと思いつつ、自立していると思いつつそれでもきっと守られていた。

涙がでる。心が痛む。腕を伸ばしたその先に浮かんだのは幼い頃見たイギリスの優しい笑顔だった。