01,さみしいんだもん
01、さみしいんだもん
あぁ、遅くなってしまった。
ドイツは呟きながら、自宅への道を小走りに進む。
ここ一週間ほど、家に帰れなかった。
別に帰りたくなかったわけではない。仕事が立て込んでいて帰るに帰れなかっただけのことだ。
家に帰らなかった。そして、アイツ、に連絡もいれていない。それが一番の心残り。
前方にみえてきた自宅。そこには、煌々と明かりが。あぁ、
――もしかして、また
嫌な予感を振り切るようにドアを開けた。
とたん、鼻につく、鉄の・・・
「何をしてる!!!イタリア!!!」
自室の、木目が綺麗な床の、その上に。
赤
あカ
アカ
あか
その中心に、イタリアが
「あ、ドイツ、おかえり。」
「やめろ!!」
その手に握られた、赤く染まったカミソリ。それを奪い取る。イタリアがとても脆い事を、ドイツは知っていた。
自傷癖があることも。
手首には赤くて深い筋。
「だって、さみしかったから。」
「さみしかったら、こんなことをするのか!?」
血まみれの、細い手首を持ち上げる。その手は血の気を失い白くしろく。
「だって、だってドイツ。」
白い手首に赤い血に木目の床にイタリア
「だってドイツ、俺はさみしくなるとなんだかぼんやりして生きてるのか死んでいるのかそれも解らなく
なるんだ、ねぇ俺は痛いのとか血とか好きじゃなくてむしろ嫌いで、だから戦争とか大嫌いで、でも血を
みたり痛かったりすると、あぁ俺は生きてるなってそう思えてそれはとても不思議ででもうれしくてだから」
「もういい」
話し途中のイタリアをとどめるように、ドイツはその細い体を抱きしめる。
手首から漏れる血が染みるのもいとわずに、
イタリアがふらふらと手を伸ばしてドイツの背に手をまわした
「ねぇ、ドイツ。」
「なんだ。」
「さみしかった」
「すまん。」
「ねぇ、ドイツ。」
「なんだ?」
「こんな俺でも、好き?」
「あぁ。」
「ねぇ、ドイツ。」
イタリアが、体を起こす。
二人の体が離れて、そして視線が絡んで。
イタリアの目は綺麗な茶色。
綺麗に綺麗にドイツを映す。
「キス、して?」
「・・・Ja」
深くなるキスを、誰がとめられようか。
イタリアの血が、ドイツの軍服を汚す。
自分の血で汚れたドイツを見て、イタリアは微かに笑んだ。