02,きらいになった?


深くなるキスをだれが止められようか。

床でコトに及ぶのは、趣味じゃない。
別に自分に害は無いけれど、イタリアが背中を痛めるのではないかと思うから。
舌を絡めるようなキスをしながら、イタリアに寝室への移動を提案する。



「やだ。ここでいい。」



しかし、提案は2秒で却下され。
辛いのはイタリアのほうだろうに。けれど、切羽詰まったような目のまま角度を変えたキスをされれば、それ以上 押せもしない。
せめてと抱きかかえるようにしたら、それは嬉しいのか反論はなかった。


背中のラインをなぞるようにすれば、ぴくん、と体がはねる。細い首筋に跡を一つ。
イタリアの前に右手をかざせば、そう決められていたかのように、指に舌が這わされた。
血まみれの左手を添えながら、丹念に舐めていく。
鼻を掠めるのは鉄くさい血の香り。



嗅ぎたくはなかった、そんなもの。イタリアが自分で自分を追い詰める様をみているのはこの上なく辛いのだ。
どうしようもない焦燥感。
振り払いたくて、濡れた右手を後ろに回した。
「いいか?」
問いには小さな肯定。

人差し指を埋め込む。このくらいなら、慣れたコイツには辛くない、はず。
表情を確認してから、中指も挿れれば、腕のなかの体が少しすくむ。

大丈夫か?と問いかけようとした口がキスでふさがれる。
「はやくして」
口を離しざまに一言告げられて。
そういうなら、と押し広げるように指をうごかしたら、耳元にかかる息が浅く速くなった。



「ねぇ、どい…つ。てくび…きっ…て、ごめん…ね…。」


少しずつ速くなる指の動きにあえぎながら、とぎれとぎれの懺悔。

「謝る必要はない。」

「でも…あふ…ねぇ、ごめん…だから。」

すがるような声に血の匂いは濃くなって

「嫌い…にならないで。」

またきっと手首の傷が開いたんだろう。
白い腕に赤い筋。



切ない懺悔は聞きたくない。それが自分の我侭でも。

指を抜いて、抱きかかえ直し。耳元で囁いた。


「挿れるぞ。」


返答は聞かなかった。


「ちょっ…ま…あぅ…ん」


懺悔は途絶え、耳元に入るのは甘い吐息。
なのに、離れない。耳元で繰り返されるのは、切ない懺悔のリフレイン。




こんなことしてるおれはきらい?ねぇきらいになった?おねがいきらいにならないで。おねがいだから。 おれがわるかったの、だからきらいにならないでそばにいて



聞きたくない。聞きたくなど。



動きを速くする。
イタリアの言葉はもう意味を成してはいなくて、

肩を濡らす涙は快楽故かそれとも他の理由なのか。

考えたくもない



「あ…やぁ…ねぇ…おれのこと…すき?」

「あぁ」



本当に、すきだ。



嬉しそうに、初めて思いをつげたときと同じ、陰りない笑顔で笑ったイタリアが愛しくて、切なく。
強く抱きしめる。


血の匂いも赤い色も今は忘れて、快楽に溺れようか。



自分の目からも涙が零れていることは、この際無視することにした。