俺だって一応これでモテるほうだ。
だから女に迫られたことは何回かある。

けれど、


「ねぇ、にいちゃん。」


まさか実の弟に


「構って。」


迫られるとは思ってもねぇことだった。







03,構って





「冗談はやめとけ。」

「冗談じゃないもん。わかってるくせにー。」



あぁ、解っているともさ。そりゃあイスに座った俺の膝の上に向かい合わせになるようにまたがって座り込んで 首に手まで回されたらシたいことも本気だっつーことも解る。しかも俺の得意分野のことだ。

だが、

ちょっと見おろすようにしてイタリアの方を見たら、にこっと微笑まれ。いや、こいつの可愛さは俺の射程距離には がっちり入っているんだが、だが、一体、


『何があったっつーんだこりゃ。』




これに至る経緯に別に変わったことなんてなくて、ただ、いつものように『にいちゃん、遊びにきたよ』とか言ってイタリアが 訪ねて来たから、家に上げてやっただけだ。
それ以上でもそれ以下でもない。
なのに、いつの間にやらこうなっていた。
俺はそりゃあいつも他人にソウイウちょっかいをかけちゃいるが、迫られたからといって弟に手ぇ出すほど飢えちゃいねぇし、こんなことをこいつがしてくるなんてのは変だ。いつもなら、ちょっかいかけるとむしろ嫌がる性質なのに





「…何があった?兄ちゃんにいってみろ、な?」

「なんでそうなるのー?俺は構ってって言ってるだけじゃん。」


ぷう、と頬をふくらませる姿はいつものイタリアだ。
なのに、いつもとどこか違う。変だ。こいつに何があった?


「にいちゃんにもいろいろすることあるから、いったんどいてだな…」

「することってなに?」

「いや…あー仕事とか、ほら。」

「俺、にいちゃんが仕事してるとこ、みたことないよ。」

「お前何気にひどいこと…」



いつも、なんだかんだいって大人しくいうことを聞くイタリアがひこうとしない。


こいつがこんな風に意固地になるなんてやっぱおかしい。
いや、それよりおかしいことがある気がすんだ。なんだ、何がおかしいんだ?


「ねぇ、にいちゃん、なんで構ってくれないの?なんで?ねぇ時間はあるんでしょ? この前、街中でおねえさんを口説いてたじゃん。その時間はあるのに、俺に構う時間はないの? なんで、みんな俺に構ってくれないの?」


みんな?



あぁ、いままで、頭につかえていた、この奇妙さが不意に理解できた。
なにがおかしいって、



「…なんでお前、構ってほしいなら、ドイツんとこいかねぇんだよ。」



いつもならこいつは、こんな意味でいかもしれないが、構ってほしいならドイツのとこに行ったはずだ。
こいつは、ドイツが好き、なんだから





「なんでそこでドイツがでてくるの?関係ないじゃん」




とたんきっとにらまれて、あぁなんとなく今俺に迫ってる理由は予測がついたけども。


にらんでくるコイツの目はぞっとするほど魅力的。
こんな色っぽい目で迫るやつをみすみすフるとは



「あいつもばかだねぇ…」

「なに?」

「いや、なんでも」



見上げてくるイタリアの顎をちょいとつかんでキス。
目を一瞬見開いたイタリアはそれでも軽く口を開けて誘いこんでくる。
なかなかサービス心があって結構じゃねぇか


「どこでこんなこと覚えてくんだか。」

「だいたいはにいちゃん。あと少しがどこかってのはないしょー。」


さっきの睨みとは一転、甘い目をしたイタリアはどうにも俺の好みにピンポイント。
もともと倫理とかそんなんに興味はないし。
コイツが望んでるなら、これもまた一興かもしれねぇな、とか考えたりして。


「ねぇ、にいちゃん、髪切って髭そる気ない?」


俺の髪をゆるくつかんでそう甘く囁くイタリアの真意もなんとなく解ったけれど そこは無視して深めのキス。

舌を突っ込んで蹂躙したイタリアの口内は甘いあまい味がした。


なんでも欲しがるガキの味だと、そう思った。








全国のイタリアファンの皆さんごめんなさい。うわぁそろそろ 殺されそう。
兄ちゃんがエセくさいのはいつものことなんで勘弁してください