たまにはこんな日もある
ようするに、そのとき俺は精神的に酷く疲れていてそれがいけなかったのだろう
と思う。俺は上司のくだらない話を延々と聞かされた後で、苛々していた。さら
にいえば、それが既に三日も続いていたのだ。
そんなとき、人は時に無謀なことをしてしまうときがある。
要するに、それだけのことだ。
帰ったとき、家はしんと静かで、それが俺には意外だった。
最近はイタリアが家
にいるのが普通で、だいたいの場合帰った時はうるさい程の歓迎をしてくれる。
なのに、今日は違っていた。静かなのだ。
鞄をソファーに放り投げて呼んでみる
。返事がない。
テーブルの上に後は焼くだけになったグラタンとラップがかけら
れたサラダボウルが置き去りにされていた。
晩御飯はできているのだ。
顔を巡ら
せたその先に、薄く開かれたままの扉が見えた。引かれるようにそのまま廊下へ
出る。その先、また一つ薄く開かれた扉を開けて、
そこに、彼はいた。寝室の俺のベッドを占領するようにして、
エプロンをつけたままの彼…イタリアは眠っていた。
焦げ茶の髪が白いシーツに
曲線を描いて広がる様は酷く綺麗に映り、そう、その綺麗な茶と白のコントラストとそれの下
に隠れるようにあるあどけない寝顔を見たとき、自分の中にふと突発的な感情が浮かんだの
だ。
その感情は同義に反していると、そんなことは解っていた。
が、抗いがたい
激しい感情でもあった。
これは言い訳にしかならないだろうが、俺は疲れていた
し、そういう人間はしばしば突飛もない行動にでるものなのだ。だから、
眠る彼を跨ぐようにしてベッドの上に乗り上げる。顔を近づけても彼が起きる気配は
なかった。
口の端にグラタンに使ったであろうホワイトソースが僅かに付いてい
て、その事実にすら胸を掻き立てられる。
息があがっていくのを止められない。
自分がどうしたいのか、どうするべきなのか。そんなことを考える余裕などなか
った。
ただ、その唇を塞ぐようにキスをする。普段キスをすれば甘えるように絡
んでくる舌が今日は動かずにそこにあって、そんなことすら愛しい。
キスを深く
して、無理に舌を絡める。微かにホワイトソースの味がして、どうにもこの気持
ちは止まってはくれないらしい。
体重を緩くイタリアにかけて、エプロンをたく
しあげた。
ピンクのフリル付きエプロンはイタリアが持ってきた当初はなんて趣
味が悪いんだと感じたはずなのに、今はそれに無性に胸が騒いだ。たくしあげな
がら、そのまま右手をシャツの中に入れる。暖かい肌に触れた瞬間、イタリアの
体がぴくん、と動いた。
起きるかもしれない。思いながらも手が止まらない。
探り当てた右の突起を刺激
しながら、左手で彼のベルトを外す。はぁはぁと自分の息があがっているのは何
故なのだろう。いや、自分は疲れているのだ。だから、そうだから、仕方ないの
だ。仕方ない。
服をたくしあげた。目に映る肌色。唇を下にずらして、空いていた左の突起を口
に含む。あぁそうだ、こんなこと、普段ならしないのだ。
ただ、そう今は止まらない
。ベルトがなかなか取れず、いらつく気分のまま、無理矢理引き抜いて地面に投
げ付けた。
左手でズボンの上からソレを撫でると、上からふぅ、と息漏れのよう
な声。顔をあげれば、かすかに苦しそうにした表情のイタリア。
ソレは確かに反応をしていた。あぁ、苦しいのかもしれない。
緩く開かれたまま
の口にまた深くキスをした。舌を絡めて、絡めて、唾液が口端から零れる姿が愛
しいと思う。
そんな自分はもう駄目だろうか。でも止めれるわけでもない。ズボ
ンを下げて、そのまま彼のを擦る。
そういえば、こういうコトに及ぶのも久しぶ
りだった。イタリアのソレを擦ると、彼の表情が苦しそうに歪む。
はぁはぁ、と
彼も苦しそうに喘いだ。
緩急つけて煽りながら、口づけようとする、その時、
不意にふるりと長いまつげが揺れて、ゆっくりとまぶたが動いた。
現れたのは済ん
だ茶色。綺麗だ。その綺麗な瞳に自分が映っている。おきたのか、そう俺が言う
より早く、その目が見開かれた。
「え、あ、な、なに!な、え、あ…あぅ…あ、ちょ、やだ…ぁ、まって、や、」
かわいそうに、どうやら快感に頭が追い付いていないらしい。イタリアの腕を片
手で押さえ付ける。
もがこうとしたらしい足はまとわりつくズボンに邪魔され、
動かなかった。下を擦りながら、口をキスで塞ぐ。くぅ…とイタリアの口から声
が漏れた。
限界が近いのか、キスをしながらでも、彼が喘ぐのがわかった。
茶色の瞳がこち
らを見ている。涙で潤む目が愛しい。
口を離す。やだ、やだ、と呟くように彼は
繰り返して、それでも抵抗は無くなっていた。手の動きを早くする。イタリアは
またその目を閉じて。
「あ、やだ…やだ…や…あ、うーっ!!」
びくっとイタリアの体が一回跳ねて、次の瞬間、左手に熱い感触。イタリアはか
くん、と倒れるように体をベッドに戻した。茶色の髪が汗をかいたその頬にはり
ついていて、それを払おうと手を伸ばす。
そのときだった。
イタリアが肘をついて体を起こす。そして、白い手が動いた。
ぱあん!
頬にじんとした痛みが走る。はぁはぁと息をしながら、目の前のイタリアはこち
らを睨むように、それでいて悲しそうに見ていた。
とたん、今しがたまで自分がして
いた行動を思い返す。押し寄せる後悔。あぁ駄目だろう、あんなことをしては。
すまない。小さな声で謝罪をいれる。その声に、イタリアがまた顔を歪めた。違
う、
「違う、謝ってほしくなんかないよ。俺ね、ドイツ好きだよ。ヤりたいならヤれ
ばいいよ。でも、さぁ、だったら起こしてくれてもいいじゃん…!!ねぇ、俺ね
、」
涙声で話すイタリアの茶色は潤んでいて、俺はどうしようもない気分になった。
イタリアの目がこちらを見ている。その目は、それでも綺麗なのだ。
「ドイツとせっかくシてるのに、寝てるなんてやだ。やだから、さぁ、ね…」
「解っている。」
涙声で話し続けるイタリアの頭を右腕で抱えこむ。すまなかった。もう一度謝る
と、腕の中でイタリアが頷いた。イタリアが顔をあげる。目線が合った。
そのまま、ゆっくり口づける。甘えるように絡む舌はホワイトソースの味。あぁ
そう、
「仕切り直しだ」
あんまり甘くならなくてごめんなさい。リクエストありがとうございました!