ミルクティーに差し込む夕日


なんで自分がこうなっているのかなんてよくわからない。今はまだ夕日も照っているようなうららかな午後の一時で、目の前にはミルクティー。普通のティータイムのはずなのに。なのになぜか自分の口内を支配してるのは甘ったるいミルクティーじゃあなくて、べたべたした赤い舌だった。

「イギリス」

なんとか引きはがそうとした腕を押さえこまれて、そのままテーブルに倒される。がしゃん、カップが倒れる音。ううん、これはやばいんじゃないだろうか。流石のアメリカも焦りを覚え始める。こんなことになったきっかけはよく覚えていない。あぁ、そうだ、アメリカはふと思いついた。

『好きだ』

言われた、一言。アメリカはそれをたいして気にせずそうかいとかなんか答えた気がするけれど、でもまてよ、アメリカは思う。俺は自分も好きだとは言ってないんだぞ。

「っ待ってくれよ!!!!」
「った…!何するんだ。」

それはこっちの台詞だ、とアメリカは思う。いきなり犯されかけたんだぞ、舌を噛むくらい我慢してくれ。

「君はいったいなんなんだい?」
「好きだとさっき言っただろ。」
「俺は了承なんかしてないぞ!」
「…………」


そこでいきなりイギリスが黙り込むものだから、思わずアメリカも黙ってしまう。目の前で零れたミルクティーが染みを作る。そして夕日に照らされたブリリアントグリーンが光って揺れて、

「……さっきのキス、嫌だったか?」

あぁ、駄目だ、口内にミルクティーの味が。

夕日に照らされミルクティーとブリリアントグリーンが揺れる。アメリカは呆然として立ちすくんで、あぁそれでももう勝敗は見えているのだ。

「…負けたよ、イギリス。」




きみが、すき。



キスひとつで変わる人生もありってことで。