ひるさがりのお話




ある日イタリアは、見かけないものをみつけました。



「ねぇねぇ!!しんせいろーま!」

「なんだ?」

「あれ、オーストリアさんのメガネだよね!」


神聖ローマが見てみると、確かにそうです。あの黒ぶちは、オーストリアさんのメガネです。
今日は、オーストリアさんはかぜでねこんでいます。
だから、机の上にメガネをおいたのでしょう。



「ほんとだな。」



風邪ひきでねているオーストリアさんをおこさないように、二人は小声で話します。



「ねぇねぇ、あのメガネ、ちょっとかけてみたいな。」

「ばか、おこられるぞ。」

「うぶー…でもー…かけたいんだもん…」


うわめづかいでいわれると、神聖ローマも本当はメガネをかけたイタリアが少しみてみたい、 などとおもっていたものですから、駄目とは言えなくなってしまいました。
それに、無理にダメといえば、イタリアは悲しむでしょう。
それは、とても嫌でした。


「わかった。ちょっとかけて、返せばばれないはずだ。」

「わーい!!しんせいろーまだいすき!!」


大好きといわれて、神聖ローマの顔は真っ赤。でも、ほんとはとてもうれしいのです。
少し背伸びして、机からメガネをとってあげました。
黒ぶちのメガネをイタリアにわたします。


「ほら。」

「ありがと!」

イタリアは少しスカートを引っ張って宮廷風のお辞儀をします。
それから、嬉しそうにメガネをうけとりました。
そして、メガネをかけて。















『いたりあぁあああ!!!!』










突然大きな声!!!!
寝室で寝ていたオーストリアさんは、びっくりして飛び起きました。
あれは、神聖ローマの声です。


「なにか…あったのでしょうか。」


あわてて上着を羽織り、ベットサイドに手をやりますが、眼鏡がありません。


「そういえば、隣室の机においたままでした。」


なんだか嫌な予感がします。オーストリアさんはよく見えない目でふらふらしながら隣の部屋に向かいました、
そして、



「あぁ、やはり…。」


オーストリアさんがみたのは、
自分の黒ぶちメガネをかけて倒れているイタリアと、わたわたしながら駆けまわる神聖ローマの姿。


「い、イタリアが倒れたんだ!!」

「私のメガネなんかかけるからですよ。お馬鹿さんが!」


オーストリアさんはイタリアからメガネを取り上げます。
そして、イタリアを起こしてあげました。


「目をあけなさい」

「ヴェー…くらくらするぅ…」

「メガネをかけたからです。もう外したから大丈夫ですよ。」


イタリアがおそるおそる目をあけると、さっきまでくらくらしていた世界は、もういつもの世界の戻っていました。


「あれ?」

「私のメガネは度が高いのです。目のいいあなたには、辛いですよ。」


よくわからないけれど、眼鏡ってすごいなぁ、とイタリアは思います。
そして、それをかけているオーストリアさんも。


「あの、すまない。俺がかければいいといったから。」

「うんーぼくがおねがいしたんだから、あやまることないよー。」

顔をふせる神聖ローマは本当にすまなそうです。
イタリアはこんなふうに自分を思ってくれる、神聖ローマが大好きでした。



「なんとなく、これまでの経過はわかりました。これは二人ともに責任がありますね。」


メガネをかけなおしたオーストリアさんは、そう言って二人の前に立って、二人はちょっと怖くなります。


「二人ともなにか、私に言うことはありませんか?」


二人はちょっと顔を見合って、それから同時に頭をさげて。


「「ごめんなさい…」」


そのとたんくすくす、笑い声。
二人が顔をあげると、ハンガリーさんがわらってこちらをみています。


「オーストリアさん、許してさしあげたらどうですか?謝ってることですし。それに…」


ちょん、とハンガリーさんはオーストリアさんのメガネをつつきます。


「これが机の上にあったら、私もかけてみたくなりますもの。」



オーストリアさんは溜息をついて、眼鏡をちょっとなおして、それから


「わかりました。でも、責任はとってもらいます。もう二度とこのメガネをかけないこと。 それと、私は今日風邪でねていたいのに、起こされてしまいました。まだ眠りたいです。なので。」


オーストリアさんは外を指さしました。


「今日はいい天気なのですから、二人とも外で遊んでらっしゃい。」



二人は顔をみあげて、それから笑って。


「「はい!!」」








ぱたぱたと走りながら、イタリアは思います。いつか自分が大きくなったときメガネをかけて、子供がいたずらでそれをかけてみたとしても、怒らないでいてあげようと。


空は抜けるような青空です。オーストリアさんは、あのメガネごしに、その空をどんな風にみているのでしょう。
それを聞けばよかったな、とふとイタリアは残念に思ったのでした。






それは、しあわせなはるのひるさがり。





本当は拍手お礼にしようとしたのに、結構長くなったからこっちに収納。
オチがない。でも、この家族本当に好き。