大切な、大切な友達にこいびとができました。


確かに恋だった


「・・・幸せを、願わないわけじゃあないんだよ。」
「ええ。」
「でもね、もやもやするんだ。」

大切な、たいせつなひとにこいびとができました。
それは、本当に大切な人でした。僕らの世界は何一つ欠けてはだめで、
それで全てが完結していました。
僕らの世界はとても居心地が良くて、
すっとこのままでいれるとそんな錯覚をおこしそうなくらい。

「どうしてこうなんだろうね。俺は。どうして素直によろこべないのかな。ううん、違うよ。こいびとが俺にはいないから羨ましいとかそういうのが問題じゃあないんだよ。違うの。そうじゃなくて、幸せになって欲しくて、なのにね。」
「ええ、解りますよ。イタリアさん。とても、とてもよくわかります。」



『多分私も同じ気持ちです。』 



それは理想の友情でした。
それは理想の空間でした。

大切な大切なひとにこいびとができました。
それは喜ぶべきことでした。いや、確かに嬉しいことでした。
だけどどこか苦しいのでした。
胸の辺りが苦しいのでした。
この理想の空間に水をさされたような、そんな


「俺はね、本当に幸せになって欲しいんだ。」
「そうですね。私も同じです。」
「だけどどこか寂しいね。」
「・・・このようなことで、私達の絆はきれませんよ。」
「解ってる。解ってるよ。」



『でも、あの人が最初に想うひとが、俺たちじゃないということが寂しい。』



三人でよく行ったなじみの場所の、ひとつ空いたスペースがなんだか寂しく見えました。
いつも三人で聞いていた歌を聞くのが少しつらくなりました。
これは終わりではなくて、むしろ始まりだとは解っているのでした。
それでも。

こんな風に思うのはきっと普通ではないのでしょう。
こんな風に思うのは誰のためにもならないでしょう。
それでも思ってしまうのです。


「なんで、こんなに苦しいんだろう。」
「・・・でも、それは私も同じです。」
「解らないことだらけだね。」
「そうですね。」



『でも、何とはなくわかるんです。きっと、この思いは。』



大切な友達にこいびとができました。
ぼくらの空間から少しだけ空気がもれました。
大切なひとにこいびとができました。
立ちすくむ僕達には少しだけ胸の痛みが襲いました。

僕らは少しだけ想いすぎていたんです。
この想いが友情をこえていることに気付いたときには遅すぎました。


「幸せになってほしいな。」
「そうですね。」
「幸せになってほしいの。」
「・・・本当に。」



あなたのこれからの幸せを僕らは願っているけれど、
どうかどうかこの胸の想いだけは持ったままでいさせてください。
あなたのこれからの幸せを僕らは願わずにいれないよ
だから
どうかどうかわすれないで、

僕らは、ぼくらは。


大切な友達に恋人ができました。

それは理想の友情でした。
それは理想の空間でした。

理想が揺らいだそのときに、僕らは初めて気付きました。









こうしていえない言葉がつのる。きみがすきだよ。