こんな愛はお嫌いですか?



あぁ、どうして気付いてくれないんだろう。どうして、どうして、俺はずっと見てるのに。ドイツのことみてるのに。あぁ、俺は知ってるよ。ドイツが朝起きてすぐに大きく伸びをすること。書類とか書いててイラついたときに右上がりの癖字になること。そんなことを誰よりも一番知っている。多分、ドイツ自身よりも。なのに、あぁどうして気付いてくらないのかな。ねぇ、ドイツ、俺はここにいるよ、ここからドイツをずっと見てるよ。今日はドイツは起きてから結構キチンと身なりを整えていた。いつもと違う。だから注意深く見ていた。たずねてきたのは知らない女の人だった。何か話している。いや、わかっているんだ。これは仕事の話だ。だってドイツがいつも仕事に使う筆記用具が出されていたし、書類を囲んで難しい顔をしているから。わかっている。わかってはいるけど。あぁでも苦しい。うらやましい。ドイツを独り占めするなんて。ずるい、ずるいよ。あぁ、気付いて。ドイツ気付いて。俺。ドイツが好きだよ。凄く好きだよ、気付いて。


「・・・クローゼットなんて、あったのね。」
「ん?あぁ、あれか。あまり使っていないがな。半分物置だ。」
「そういう風に長いことあけてない扉って何か怖いと、そう思わない?」
「・・・なぜ?」

『何か、いそうだから。』


今日は、ドイツは酷く疲れたような顔をしている。大丈夫かな。あぁ、ドイツが俺の気持ちに気付いてさえくれれば、俺はドイツの力になってあげられるのに。ドイツはめったに疲れや感情を外にださない。だからこの一面を知っている俺じゃないとドイツを癒してはあげられないのに。あぁ、早く気付いて。ドイツ、鈍いところも好きだけど、だけどそろそろ気付いてほしいのに。ドイツ、でも俺は待つよ。気付いてくれるまで待つよ。好きだから。好き、だから。

今日はドイツは機嫌がいい。少し仕事が楽になったのかもしれない。朝起きたとき、伸びをする顔が晴れやかだった。いつもこうだといいのにね。俺、ドイツのそういう顔も好きだよ。微笑む俺に気付かずにドイツは着替えをする。本当、いい加減気付いてほしいんだけどな。ううん、でも幸せだからいいや。明るい部屋の中、ドイツは電話をかけ始めた。話の内容から考えるに前の女の人らしい。あぁもう、イライラする。こんな気分いい日に電話しなくてもいいじゃん。仕事の話が続いていく。続いて、不意にドイツが話題を変えた。


「そうだ。前言っていたクローゼットだが、掃除しようと思う。」
「へぇ、それはいいんじゃない?」
「たまには日の光もあてなくてはいけないからな。」


ドイツ、ドイツ、気付いて気付いて気付いて気付いて。そろそろ気付いてもらえるかもしれない。俺の気持ちに気付いてもらえるかも。あぁ、だとしたらどんなに嬉しいだろう。これ以上の幸せはないよ。ねぇ、ドイツ、俺、ドイツのこと、




--***--

明るい部屋の中、彼は掃除をしていたのだった。その日は彼にとって久しぶりの何も考えなくていい休暇で、だから彼は普段使わないクローゼットを掃除する気になったのだった。彼はシャツの腕をまくって、それから勢いよく扉を開く。

「・・・なんだ、これ、は。」


扉の向こう、クローゼットのその壁、一面に、文字が。


『好きだよ。好きだよ。スキだヨ。スキダヨすきだよ。スキだよ。スきだよ。すキだよ。スキだよ。好きだよ、すき、すき、スキ。すき。スき。すキすきだよ、すきだよ、すき。すきだよ、すき、だよ。』


呆然と立ち尽くす彼の後ろで、カーテンが不自然にゆれていた。
どこからか小さな声がする。

「ねぇ、

気付いて?」



君の事を一番良く知っているのは俺なのに