キリエ
「すっかり、ぼろぼろだな」
長い長い戦争。今回その舞台になったのは、イタリアだった。
戦争が始まる前はあんなに美しかった街なのに、
黒いコートを風に揺らしながらゆっくりと辺りを見渡してみる。
街は、見渡す限り
廃墟、廃墟、廃墟
その中でぼんやりと佇むイタリアを見つけた。
……あいつは、この惨状をどう思ってるんだろう。
そして、
『この戦争に加担してた自分はどうしたらいい?』
「神聖ローマぁ!」
俺の姿にきづいたのか、イタリアが手を振っていた。そこにさっきまで見せてい
た寂しそうな表情はなく、代わりにあったのはにこり、と微笑。
見ていたくなくて、下を向く。
…本当は笑いたくなんかないくせに。
本当は俺のこと怒ってるくせに
「笑わなくてもいいぞ、別に。怒りたいなら怒ればいい」
「うんー?なんで俺が怒るの?」
「だから、」
あくまで笑顔を崩さないイタリアにだんだん苛々してきた。
なんでこんなはぐらかすように笑っているんだ
「こんなに自分家ぼろぼろにされたんだ!怒ってるだろ!だったらはぐらかさず
に怒れ!!俺が加わってたことくらい知ってるんだろ!」
思わず怒鳴る。
イタリアは驚いたように首をすくめて、それから俯いて。
微かに揺れる肩。
小さく聞こえる声。
ごめんなさい、おこらないで
…また、やってしまった。
いつもこうだ。こうやって泣かせてしまう。
特に今回はもともと悪いのは俺なのに、
「…いや、怒ってなどないぞ。あ、悪かった。俺は帰るから」
俺はここにいるべきじゃないんだ。多分。
「まって…」
走りだそうとした、その服の裾を掴まれた。
本当は早く立ち去りたかった。でも泣き顔のイタリアを振り払うこともできない
。
「…なんだ?」
「ぼく…ぼくね、しんせいローマのこと、おこってないよ」
必死で袖で顔を拭きながら話している。服を汚したりしたらまたオーストリアに
怒られるってのに。
「だって悪いのは神聖ローマじゃないもん…戦争しなきゃいけないようにした周
りのみんなだもん…」
泣いて泣いて伝えてくるイタリアを見ながら俺は、どうしようもなくて
ごめん、イタリア。でも悪いのは俺だ。戦争に加わった俺だ。でも、こいつは優
しいから、だから
「…わかったから、泣くな」
おわびもこめて、勇気だして頭を撫でてみた。
柔らかい、茶色。
「うん!わかったー」
イタリアが笑う。こいつの笑顔は好きだ。こんなふうに感情を出すのは、俺は得
意じゃないし。
「…戦争がなくなればいいのにね。」
不意に、イタリアが呟く。
「そうしたら、神聖ローマもぼくも悲しくないし、オーストリアさんも怪我しなく
ていいのにね。」
こいつは、優しい
イタリアが目を伏せた。ゆっくりと祈りを呟いて
『キリエ エレイソン』
祈りの言葉『神よあわれみたまえ。』
優しすぎるイタリアは、この世界に生きていくには少し綺麗すぎるんだ。
だから今決めた。けしてそれをこいつには伝えられないけど。
俺がイタリアを守る、いつまでも。
神よ、あわれみたまえ
戦争をとめられぬこの世界を
そして守りたまえ
「神聖ローマぁ…オーストリアさん家に帰ろう?」
「あぁ、そうだな」
守りたまえ、愛しいひとを
神聖ローマを大人にし過ぎたかなぁ…。でも、このくらい大人な神羅希望。
携帯で30分ぐらいで打ち込んだから、遅筆な私にしてはかなり調子よく書けた。