嘘吐きの恋
あぁ、また一人になっちゃった。
だだっ広い部屋にひとりたたずみながら、大きな窓から下を眺める。
どこまでも続く僕には見慣れた白い荒野。そこを突っ切るように、足跡が伸びていた。
一人分の足跡。行きのと帰りのとで二列分。
…ドイツ君のだ。
目を閉じて、僕の後ろ側にある革張りのソファを思う。
今は空っぽの。そして、さっきまでドイツ君が座ってたソファを。
いつもは必ずアポをとるドイツ君が何の連絡のなしにいきなり僕の家にきたのはつい先刻だった。
別に、僕がドイツ君の家を東半分とはいえ支配している現状況では、ドイツ君が家にくるのはそうおかしいことじゃない。
だけど、アポもなしでくるのは初めてだったし、何より、目が、
目がいつもとは違っていた。真剣、で。
僕は、不安、で。
『我が、東ドイツは、この度、正式に西ドイツに統合することとなった。』
なにがあったの?と問いかける暇もなかった。
不安になった僕が口を開こうとしたときには、ドイツ君はもう話しだしていたから。
耳を塞ぐ暇もなかった。
塞がせないように、早くいったんだろうから。
『東ドイツも西ドイツも、国際関係上では既に独立国家として認められている。その独立国家二ヶ国間で決まったことだ。』
『また、東ドイツはそれに伴い正式に社会主義国家圏を抜ける。これ以上の口出しは、慎んで頂きたい。」
話しだそうと開きかけた口もそのままにして、呆然とした僕をそのままにドイツ君はそう一息で言って、それから大きく息を吐いた。
僕は、僕は、
『…俺は、その報告に来ただけだ。連絡もなく来てしまって、大変失礼した』
僕は、何も言えずに。
ただ、また、
ひとりになるなぁって
独立を宣言されるのなんか、慣れてるよ、いつだってそう、僕のことを皆が置いて行く、
勝手に僕を置いていってしまう。悪者はいつだって僕。
何百年待っても、どれだけ強くなっても、
根本的な解決策を僕は知らないのだから。
だから、今回も同じ。ドイツ君が僕を置いて行くだけ。
そして最近力を失ったぼくには、それの止めかたが解らない。
『すまない。』
え?
聞きなれないことばが、きこえた
驚いてはたと顔をあげた僕が見たのは、少し俯いたドイツ君。
『すまない。だが、この世界に生きるものとして、これからは対等に見ていただければありがたい。また、何かあったら言ってくれ。』
一礼してドイツ君は部屋から出て行く。
その間、わずか10分たらず。
ぼくは、結局なにも動けずにいて。ひとりぼっちで。
「なにかあったら言ってくれ、だってさ。」
うそつき。
閉じた目の裏、ドイツ君のうつむき顔。
国外関係でも、国内事情でも立場が危うくなっている僕がいまさらドイツ君の統合に何か口出しなんてできやしないって、
そんなことはわかってるはずなのに。
すまないとかなんとかいって、そんな
「そんな、中途半端な優しさなんか、いらないよ。」
どうせ、君も置いて行ったんだ、僕のこと。
ひとりぼっちは寂しくなんかなくて、もう慣れっこで、それより嫌いなのは嘘つきで
すまない。
リフレインするあの言葉。
だまされちゃ駄目だよ。ドイツ君は優しいから、そういっただけだ。
皆ぼくから離れていった。せっかく仲良くなった中国君も、皆。
それとおなじ。
西側に統一されるってことは、アメリカ君の方につくってことだ。
僕を、見捨てるってことだ。
そんな、ドイツくんは嫌い、嫌い。大嫌い。
あぁ、でも
あんなことばを言われたのは、初めてだったんだ
少しでも、たとえ嘘でも、優しさなんて、初めてだったんだ。
「うそつきはきらいだよ。」
うそつきは、だれだろう。
「だから、ドイツ君もきらい。」
そう言って目をあけたら、何故かな、視界が滲んでいた。
胸が痛い、いたい、いたいよ。
ほんとは自分のことが、きらいでしょうがないんだ。
東西ドイツ統合の辺り。なんだか世界史習ってない人にはよくわからない話かも。ごめんなさい。
結構前に書いたやつなので、キャラの掴めてなさがおもしろい