ケチャップワルツ
「おーい。」
「・・・。」
「おーい!」
「・・・。」
「おぉおー・・・」
「いいかげん黙ってくれ!!!」
どん、と机を叩いて顔を上げれば場ぱちくりと瞬きする男が一人。背もたれを前にして椅子に座る彼は一瞬のちに口を尖らせた。背もたれに顎を乗せて、頬を膨らませる。
「いつも思うけど、君は少し怒りすぎじゃあないのかい??イギリスに似てるな!君は!」
その表情は体格のわりにひどく幼く、思わずもれるのは溜息。あぁもう、どうして自分ばかりこんな面倒な奴がよってくるのかわからないが、イタリア同様こいつもやはりなついてきた。書類をまとめながらも目の前からの視線が痛い。だいたいイタリアにしてもこいつにしてもそうだが、仕事中に構えというほうがおかしいとは思わないのだろうか。彼は手に持った眼鏡をいじくりながらなにやら話しているが、無視を決め込むことにした。構ってやると際限がつかないのだ。こういうタイプは。
「・・・おなかがすいてきたな。」
「・・・(無視だ、無視!!) 」
「おなかすかないかい?もうお昼じゃないか!!」
「(無視、無視、) 」
「すいたなーすいた。本当にすいた!!」
「(ここで構うからきっと成長がみられんのだ) 」
「よし、仕方ないからフランスでも呼ぼうかなつまらないからね!!」
「解った何か作るからお前はもう座っていろ!!!!」
あぁもうなんてこいつらはこう妙なところで策略家なんだ。フランスなんてきたらもう今日の予定は丸つぶれだ。仕事になるわけがない。なにしろ今日の書類はイギリスとの国交の問題だ。午後からイギリスが来るのを知っててフランスの名前を出してるに違いない。あいつらの喧嘩に巻き込まれるのは真っ平ごめんだ。胃痛をこれ以上増やしてたまるか。
歩きさる自分の後ろで彼が楽しそうに笑っている。何か手伝おうか?なんてこいつに手伝わせたら仕事が余計増えそうだ。それでも溜息をついてなんとなくそれを了承してしまう自分に結局のところ非があるのであり、そしてうきうきと横を歩いていく彼を見て溜息をつきながらも心のどこかでそれを容認している自分はもうきっと駄目なのだ。
「とりあえず、ケチャップが欲しいな!!」
笑う彼にケチャップを渡してやりながら、とりあえずこいつを飽きさせないように書類を仕上げていくにはどうしたらいいかを必死で考えている自分に笑った。
甘やかしちゃうものだよね。