いつものことながら、イタリアが酷い子です。注意してください。
ストロベリーパイをお食べ
「…イタリア。」
「なにぃ?」
「何しに来たんだ、一体?」
「さぁ?」
何かしなくちゃいちゃ駄目なの?
そう返答してきたイタリアにドイツは小さく溜息をつく。
朝、普段のこいつなら起きてもいないんじゃないかと思うような朝早くに訪ねてきたイタリアは
来たときからずっとこんな調子だった。
デスクの前に座ったまま、ドイツは後ろを振り向いてみる。
ソファに寝そべるようにしてイタリアがそこにいた。
手には赤い蜜のしたたるパイ。ストロベリーパイ。
読んでいる雑誌から顔も上げようとしないイタリアにどうやら帰る気はないらしい。
今日イタリアの機嫌が悪いのは明らかだった。
否、機嫌が悪いのは今日だけではない、とドイツは思う。
先日、ドイツの家でサミットがあったのだった。その時からやけに機嫌が悪いのだ。
イタリアはいつもふわふわと笑っているから、たいていの人はイタリアはいつも機嫌がいいのだ、と思っている。
けれど、
『それは、間違いだ。』
目の前でねそべるイタリアを見ながら思う。
こいつは笑顔で感情をごまかすのがうまいだけだ。
無表情よりも笑顔のしたに隠すほうが、感情は読まれにくいということを彼は知っている。
イタリアの口に消えていく赤いあかいパイ。そして、今、こいつは非常に機嫌が悪い。
だが、な
ドイツは時計を見た。午後3時。そろそろあいつが来るころだろう、と思う。それまでには、何とかしなければ
「…イタリア、」
「なにぃ、さっきからさ、」
「…今日は、帰ってくれないか?客がくるんだ。」
イタリアを刺激しないように、そう、優しく言ったつもりだった。
それなのに、
瞬間、ドイツが感じたのは背筋の冷たさ。
イタリアが雑誌から顔をあげてみている、その視線が冷たかった。
こちらを睨む目にいつもの柔らかさが、ない。
イタリア、と言おうとした口は何の言葉も出てはこなかった。
息をのんだ瞬間、イタリアの顔に浮かんだのは、いつものような笑み。
笑ったイタリアは語りかけるように言葉を紡ぐ。
ねぇ、ドイツ、前はあんなところに鉢植えなかったよね、あれどうしたの?
ねぇ、この前のサミットのときいやに日本と仲良かったよね、どうして?
ねぇ、ドイツ、
「今から、来るのは、俺よりも大切な人?」
だめだ、だめだ
ドイツの背中を嫌な汗が伝う。
怖いと思った。初めて、目の前の旧友が。
違うのだ、と思う。
違うのだ、日本とはけしてそんな関係ではない。
『…私の家では、そろそろ梅雨、という季節なんですよ。雨ばかりで憂鬱なんです』
前のサミットの時、偶然日本と話す機会があったから
『それなら、家に来たらどうだ?こちらは晴れているからな』
その場の流れで誘った、ただ、それだけ。
ちりりーん
突然、鳴り響くベル。
客、だ。
「…イツさん?ドイツさん?」
玄関口から、聞きなれた声がする。
返事を返そうとしたドイツを制してイタリアはにこり、と笑った。
「ねぇドイツ、まさかとは思うけど」
俺がいるのに、返事なんかしないでしょ?
ちりりりりん
「ドイツさん?いらっしゃらないんですか?ドイツさん?」
声は、でなかった。
日本が、歩きさっていく音がする。探しにいったのかもしれない、とドイツは思う。
目の前では、イタリアが笑っていた。
苺ジャムで汚れた手でドイツに抱きつく。
「ドイツ、大好き」
口元についた赤い蜜がなぜか酷く禍々しいと、そう思った。
イタリアファンのみなさんごめんなさい
本気で刺されそうです。ごめんなさい。脳内こんなイタリアばかりです。