黎明





「おねが…いもうゆるしてくださ…」


イタリアの震えた声がする。フランスは椅子に腰掛けたまま、イタリアを見下ろ す。

フランスの組んだ足の下30p程先に、転がるようにしてイタリアがいた。その細 くて頼りない腕は後 ろに回され無造作に縛られたまま。


「おねがい、だからぁ…」


フランスは足を組み直して笑うだけで何もしない。こんな風な倒錯的な行為をす るのは別に理由があってのことではなかった。ただ、強いていえば趣味、だ。双 方の。

イタリアが自身を床に擦り付けるように腰を揺らしだす。散々に弄られた後のイ タリアは既に限界なのだった。涙ぐむイタリアの小さな喘ぎ。


「…なーにしてんだよ、この淫乱」


フランスが持っていたワイングラスでイタリアを小突く。微かな快楽に酔うイタ リアはそれにすら小さく声をあげた。
グラスの縁からワインが零れてイタリアの髪を濡らす。うつろにフランスを見つ めるイタリアは小さくて浅い息ばかりを繰り返し。


「だって…兄ちゃんがシてくんないから…」

「ほぉ」


からかうような笑み。ワイングラスをテーブルに戻したフランスはイタリアの顎 のラインをなぞるように手を動かした。イタリアがはぁ、と息を一つはいて 目を閉じる。薄く開いた口から覗いたのは赤い舌の先だった。フランスはちゅ、 と軽くキス。


「…ならその気にさせてみりゃいいだろ」


椅子に浅く座り直し


「やり方はわかるな?」



こくり、とイタリアは頷いた。











ちゅく…ちゅ…



響くのは水音。
フランスは小さく息を吐いてから下を見下ろす。


…なかなか、うまいもんじゃねぇか


手を封じられながらも、イタリアは必死で口で奉仕をし続けていた。大きくなっ てしまったフランス自身をイタリアはくわえ込むことができず、半ば頬ずりをす るような形で刺激。普段、さらさらと揺れる茶色の髪に粘性の液体が張り付いて 光る様に思わず欲情する。少し大きくなったフランス自身に対応しきれなかった のか、イタリアが軽く噎せた。

あぁほんとうに、


「かわいいねぇ…イタリアはなぁ」


イタリアのこめかみあたり、くるり、と揺れるこいつのもうひとつの性感帯に手 をのばす。


「あ…あぁああ…」


イかせないように、ぎりぎりのラインの刺激。イタリアが背中を反らせる。飽和 点間近の刺激は苦しい以外何もなく、ひくひくと震える体にフランスはまた欲情 する。

あぁ駄目だ、駄目


「…まだイってねぇんだけど」


薄く開いたままの口にむりやり突っ込むとうぅ…というくぐもった声の後になん とか舐めようと舌を動かすイタリア。
フランスはその頭を撫でる。
俺の言うことをきく、あぁなんていい奴。



「…そろそろイきたいか?」



にやり、フランスが笑いながら尋ねれば、一瞬の間の後、イタリアは小さく頷く 。
フランスはそんな愛しいイタリアの耳にそっと顔をよせて。




「…じゃあ、ちゃんと全部飲めよ」




「ーっ!!!」



イタリアの顔を固定したままでフランスは腰を動かす。
息のできなくなったイタリアはくぐもった声しかあげることが出来ず、


「ふ…ぅうー!!」


最後、口に欲を叩きつけながら、イタリアの第三の性感帯をフランスは強く握り しめる。びくんっと体を震わせたイタリアはそのまま床に倒れた。口からも震え る自身からも白い液体が零れて床に染みて。

あぁ


「全部飲めっつったのに」




ごめんなさい、と呟いたきり動からくなったイタリアをフランスは笑いながら見 下ろす。軽くくちづけた髪はワインの甘い味に混じって苦い、液体の味がした。


この関係みたいな味だ、とフランスは苦笑した。
後数時間で朝がくる。こいつの恋人がやってくる。そいつは優しすぎるから、こ いつが望むみたいに酷くなんてできやしない、そうだろ?



あぁでも、

「そろそろ、つまみ食いは飽きてきてんだよ…」



後数時間でイタリアの恋人がやってくる。この姿を見たらどう思うだろうか。


フランスは笑う。過ぎた快楽に飲まれ眠るイタリアを見ながら、フランスはワイ ンを一気にあおった。