残暑お見舞い申し上げます



体がだるくてしょうがない。
こんなときがまれにあるのだ。不意にもうどうしようもなく体をおこしてもいられなくて、私は床に体を横たえる。
どうしようもなくだるい日は私は本当に何もしたくない。
どこか遠くの部屋で電話のベルが鳴って、でも私の今の体力ではとることすらままならない。
起こしかけた体はしかし重力に逆らいしれずに地に落ちて、あぁ、だって本当にだるいのだ。

夏バテだろうか、しかしそれにしては来るのが遅すぎる。理由はわからない。ただだるい。
電話のベルが鳴り止んで、それでも体を起こせない。
自分はどちらかといえばマメなほうだと思うし、こんなふうに寝転ぶのは好きではない。
でもどうにもだるくてしょうがなくて、ふうと吐いた溜息が床に吸い込まれるのをみているしかないのだ。


「ここまで、辛いのは久しぶりです。」


この夏は異様に暑かったから、仕方ないのかもしれないけれど。
にしても一気にきすぎた。時計を見る。まだ午後3時だ。やりたいことはたくさんあった。
でも、どうにも体を起こせない。
玄関でチャイムの音がする。出なくてはいけないだろう。
無理に体を起こしたら、一気に襲うめまい。
くらくらと視界が暗くなって、椅子に派手に当たって倒れかけた、その瞬間、声がした。

「大丈夫か!!」

体をそのまま抱きとめられて、薄ら目を開けた先に金色。
その中に澄んだ緑を見て、私は安堵する。あぁイギリスさんじゃないですか。
床が泥で汚れていた。あぁもう、土足で上がらないでと何回も言ったのに。
それでも今はそれよりももっとこの安堵の方が嬉しくて私は何も言わずに頷く。大丈夫です。

「電話に出ないから、心配になって。」

そんなことで来るんですか。あぁもう本当にこの人は。
でもまぁ、こんなところも嫌いじゃないのだから、自分も重症なのだ。
少し、株が上がりましたよ、イギリスさん。
聞こえないように小さく呟く。
私は笑って、それを見たイギリスさんも笑う。
あぁ、こんな午後もいいかもしれません。ほら、こんなにのんびりとしていて、それで、

「そうだ、日本。」

ぼんやりとしていた私に向けて、イギリスさんの声が振ってきた。

「何か、食べれるもの作るから、待っててくれ!」


…前言撤回。こんな午後はちょっと危険だ。




残暑お見舞い申し上げます。私もこの時期どうにも体がおこしてられません