きらきらひかるみどり、きれいなみどり。



04,天の庭が見える石の緑



「これ、なに?」


久し振りに日本の家に遊びにきてみた。
俺の家は日本の家からは遠いとおいところにあって、だから俺はなかなか来れない。
今日はシエスタを我慢してここまで来たんだよ。
ちょっと眠いけどそれは我慢。

久しぶりの日本のおうちは、発展していて、俺のうちとは大違い。
そこで見つけた古ぼけたみどりのいしころ。
棚の上に大事そうに置いてあった緑。
奇麗なみどり。



「あぁ、それですか。」

日本が笑う。手にはちょっと変わったポットを持っていた。
きゅうすっていうんだって。

「ちょっと拾ったものですよ…捨てられなくて。」

そう言って俯いた日本はもうお茶を淹れるのに専念しているみたいに見えた。
ううん、たぶん違うんだろうけどね。
多分、これは合図。もうこの話はおしまいって合図。

俺はそっとその石を棚に戻した。
また、変なこと言っちゃったかなぁ。俺、馬鹿だから、良くわからないんだ。

「はい、どうぞ。」

声に慌てて振り向いたら、日本がお茶を差し出していた。
俺は一瞬びっくりして、それからすぐににへら、といつもみたいに笑う。
とりあえずわらっておけばなんとかなる、と気づいたのはずいぶん昔のことだ。
笑えば、なんとなく過ぎていく。
大切なものはなかなか手に入らないけど、嫌われることもないんだよ。

日本は俺の顔を見て、少し困った顔をした。
勘が鋭いから、らしくもなく俺が沈んでたの、ばれたかなぁ。
困るな、ばれたくないのにな。
ちょっとした沈黙が嫌で、俺は話しはじめる。沈黙は嫌い。なにか、心の中が読まれてしまいそうだから。



「あのね、さっきの石さ、エメラルドっぽかったね。あれ、あの、エメラルドって、天の庭が見える緑って言うんだって。 昔ね、言われたことがあるよ。あのね、それで、その。」


くすくす。 ふと気づいた。目の前で、日本が笑っていた。
俺も癖でなんとなく一緒ににへら、と笑う。
笑いながら、日本がいった。


「あれは、ただのガラスですよ。わかってるんです。そんな高価なものじゃありません。 ただ、本当にそんな緑なのだとしたら。」


ふい、と俺の前であげられた視線。
その視線が遠くに飛んでいた。
ここじゃないどこかにとんでいた。
俺の前にいながら、日本はどこかへ飛んでいた。



「だとしたら、天の庭じゃなくて、あのひとの庭がみえたらいいのに。」



にほん、と呟いた俺に返事は返ってこなかった。
日本の目に緑のいしころがうつる。
その目の中にある緑は、このみどりであって、そうじゃなかった。
俺も知らないわけじゃない、あのひとの目のみどりいろだ。


俯く。湯気がゆらゆらお茶から出てくる。
きらきらひかるみどりを思い出してみたら、なんだかちょっとくやしい気持ち。
笑ってみようとしたのに、なんだかうまく笑えなかった。




「途絶えた永遠の緑」の話の後っぽい感じ。
がんばれイタリア。