空は青く、白い雲。
天気は良くて、きらきら光る。
あぁ、こんな日は、
買い物に行きましょう
一ヶ月同居生活番外編
「で、何を買うんだ?」
「食料とかですよ。イギリスさんの家、何もないじゃないですか。何を食べて暮らしていらしたんですか?」
うっと言葉に詰まるイギリスの横をすたすたと日本が歩いていく。
まずは、野菜からです。二歩ほど前を日本は進む。
(…飯作るとフランスに馬鹿にされるし、食材なんて買ってねぇなんていえるか…)
前はこれでも作っていたのだ。ただ、あまりに馬鹿にされたせいで作るのが嫌になった。
たしかに自分の家には料理を作れるほどの物はないかもしれないな、
「イギリスさん。」
ぼんやりと物思いにふけるイギリスに不意にかけられた声。
日本だ。困ったような顔で立ちすくむ彼にイギリスも答える。
「どうした?」
「…私は、まだ市場への道、解らないんでした…」
その言葉に、イギリスは顔を上げる。
・・・確かに。
その場所は、市場とは正反対だった。
「まぁ、まぁ誰にでもま、間違いというか、そ、そういうのは、あるから。」
「安易な慰めは酷く気にさわるんです。」
結局かなりの時間を食ってしまった。
そこからちょうど町の反対側にある市場はもう酷い人だかりで、明らかに出遅れたことは明らか。
人ごみをすり抜けるように歩いていく日本の姿を慌ててイギリスも追いかける。
こんな拗ねるタイプだったとは知らなかった。
ふと昔のことを思い出す。昔、拗ねたアメリカもこんな感じで歩いて行ってしまったものだった。
そしてそれを俺は追いかけて、で、あいつはどうしたんだったろうか。
イギリスは少し楽しくなって、人ごみの中を走る。
アメリカは、確か
『いぎりすー。いぎりすー。どこなんだーい。』
叫び声を、思い出した。
そうだ、あいつ、迷子になったんだ。
イギリスは慌てて走り出す。こんなとこで日本に迷子になってもらったら困るだろ。
日本はアジアの一国であり、イギリスの国にはどうにもアジアに良い印象も持つものは少ないのだ。
慌てて走っていく。
その先に、黒い髪が見えた。しゃがみこんで、なにか、あったのかもしれない。
「日本!!!」
「あ、イギリスさん!見てくださいこれ。」
ぱ、立ち上がった彼の手に、黒猫。
「猫ですよ、猫。」
「…はぁ。」
猫はねずみを捕ってくれるので、重宝するのです。
微笑みながらそういう彼に脱力する。
飼い主だろうか、金色の緩くウエーブした髪の女性が日本から猫を受け取った。
2人の会話は滑らかな英語。日本の英語力は確からしい。
「さて、買い物しましょうか?」
「…もう少し、後にしないか。人ごみは好きじゃない。」
「…まぁ、そうですね。」
では、少し街中を歩かせていただいても良いでしょうか?
笑う彼に頷いて、メインストリートへと歩く。
こんな気分はいつぶりだろう。ふとイギリスは考える。
顔をあげた先で、何を買おうか考えているらしい日本の姿が映る。
思わず笑顔になる自分に気づいた。
空が晴れている、今日は絶好の買い物日和だ。
幸せな2人が大好きです