02,アメリカの場合
春咲センチメンタル
目の前で、モニターがちかちか光る。
俺はそれに向かって唾をはきたくなった。
大きなコンピュータ。馬鹿でかいシステム。
でもこんなもの、ガラクタじゃないか。何の役にもたたないんだ。
大きな隕石が落ちてくるのだ、と、世界が消えてしまうのだと、聞かされたのは半年程前で。
俺は、そのとき高をくくっていた。
大丈夫、だってね。
俺が、そんなものブッ壊して世界を救うんだってね。
なのに、さぁ
「結局、なんにもできやしないんじゃないか。」
目を閉じる。あれから国の全力をあげた俺につきつけられたのはただの苦い現実。
『どうにもならないっていうのかい!!?』
叫んだ俺に、コンピュータの前に座っていた皆が困ったように
振り向いた。
むりですよ、これは、むりなんです。
『なんでだい?俺たちにできなかったら誰が世界を救うんだい?誰が
!!』
無理だ、と認めたくなかった。
この世界を、大切な何かを守りたかった。
狂ったみたいにあきらめることを拒否し続けた俺にあきれたのか、気づいたら周りに誰もいなくて。
立ちすくんだ俺はひとりきり。
こんなものなのかい?世界は。
結局、最後俺はひとりだ。
ううん、もっとずっと前から一人だったのかもしれないな。
だって、こういう大切なときに誰も側にいてくれない。
俺が信じたものは一体なんだった?
ヒーローはこんなにさびしいものじゃなかったはずなのに。
「日本は、どうしているだろうな。」
不意に混じり気のない黒を思い出した。
そういえば、最後に会った国は、日本だったっけ。
『・・・世界が、終わるというのに、貴方はずいぶんと落ち着
いているのですね』
『当たり前じゃないか!世界は終わったりしないんだぞ!なんでって俺が救うからさ!正義の味方はピンチを救うんだぞ!』
『あぁ、そう・・・なんですか?』
くすくすと、日本は笑っていた。
何か、不満でもあるのかい?と俺が聞いたら、いえ、と小さく
答えていた。
視線を軽くしたに向けたままで、
『じゃあ、期待していますね、アメリカさん』
「ほんとは、一番落ち着いていたのは、日本だった気がするな。」
目をとじながら、俺は呟く。
もう考えるはあきらめていた。
…たぶん、無理なんだ。俺はヒーローじゃなかった。
世界大戦が終わったときの、日本の目を思い出した。
貴方に従います、
そう言いながら、その奥にけしてけせない憎しみがあったのを、知らないほど俺は馬鹿じゃないさ。
だから、
「こんどは、君を救いたかったよ。」
ヒーローに、なりたかったんだ。
君を、世界を守りたかったよ。君は、はじめから俺になんか頼ってなかったけど。
ねぇ、ひとつだけ聞いていいかい?
「俺は、君にとって憎しみ以外の何かになれていたかい?」
目の前の景色がにじんでいた。
ヒーローになり損ねた俺に、居場所なんてあるものか、と不意に思ってこみあげたのは乾いた笑いだった。
ヒーローなんてさびしいものさ。